涙のあとに咲く約束
「お疲れさまです」

「あ……お疲れさまです」

 それだけのやりとりで、二人ともまた歩き出す。
 でも、昨日見たときよりも、藤堂さんの手を握る男の子の顔が明るく見えた。

 よく見ると、昨日拾った絵本が紙袋から少しのぞいている。
 胸の奥が、ちくりと甘く疼いた。


 週末を迎えた金曜日の昼休み。
 食堂でランチを終えた後、経理の自分の席へ戻ろうとしたとき、総務のカウンター越しに藤堂さんの姿が見えた。

 書類を届ける用事もあったので、私はそのまま近付いた。

「これ、経理からです」

「はい、ありがとうございます」

 業務的なやりとりが終わった後、藤堂さんがふと顔を上げた。
 
「……この前は、本当に助かりました」

「この前……、ああ、絵本のことですか?」

「ええ。あの子、あの絵本が好きで……なくしたら泣いて大変だったと思います」

 淡々とした声なのに、少しだけ口元がやわらいでいる。
 その表情に、胸が温かくなる。

 私はもう少し藤堂さんと話がしたいと思い、お節介とわかっていながら連絡先の交換を提案した。

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