星を救いたいわたしと、かりそめのあなたたち
「あった! オレンジ色のシーグラス、発見!」

ひろってみると、確かにオレンジ色のシーグラスだった。
本物の宝石と見間違うような、オレンジ色にキラキラと光るシーグラス。
わたしは、それをしっかりと握りしめる。

「すげえー、やったな!」

駆け寄ってきた周防くんは、そう言ってこぶしを握りしめる。
その言葉は、ふんわりと優しかった。

「これで……サイカくんを救えるんだよね」

わたしは先程のベンチに腰かけてから、攻略本を取り出す。

「シーグラスは、奇跡の石や運命の石と呼ばれている。石言葉は、奇跡、出会い、絆、生命力。一番、レアな色である、オレンジ色のシーグラスは、特に幸運や希望を象徴する」

わたしが復唱すると、オレンジ色のシーグラスはキラキラと光を放ち始めた。

「これって……」

思わぬ異変に目を見張っていると。
光が薄れていき、気がつくと、わたしの手のひらには涙のしずくのような宝石があった。

「宝石……?」
「シーグラスは別名、『人魚の涙』と呼ばれている。人魚が流した涙が、宝石になったという伝説から、そう呼ばれるようになったみたいだな」

周防くんはスマホで調べた内容を口にした。
人魚が流した涙が、宝石に。
まるでおとぎ話みたい。
その瞬間、わたしの「もしかして」が確信に変わる。

「人魚の涙。これがあったら、サイカくんを救えるんじゃ……」
「おそらくな」

わたしの疑問に、周防くんはすぐさまうなずく。

「よし。今日は面会時間が終わっているし、明日、サイカのところに行こうぜ!」
「うん!」

元気いっぱいに走り出した周防くんの背中に向けて、わたしは駆け出す。
肌を(つた)う汗と(ねっ)された空気を置き去りに、どこまでも。

未来へと伸びる道。
その道はこれからも、曲がりくねった道が続くだろう。
だけど――もう迷うことだけはなかった。
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