星を救いたいわたしと、かりそめのあなたたち

エピローグ

翌日、わたしたちは急いで、サイカくんが入院している病院に向かった。
宇宙人さんたちを専門的にあつかう病院だからか、周りにいるのは宇宙人さんばかり。
少し緊張しながらも、わたしは周防くんとともに受付に向かう。
受付で用件を伝えると、すんなりとサイカくんの病室を教えてもらえた。

「サイカくんの病室は、四階だよね……?」
「ああ」

わたしと周防くんは、受付で教わったとおりに、エレベーターで四階を目指した。
そして、廊下を歩き、病室の前にたどり着く。
中に入ると、真っ白なベッドの上で眠っているサイカくんの姿があった。
その右腕には、点滴のチューブがつながれている。

「サイカくん!」
「サイカ!」

飛び出したわたしを追いかけるように、周防くんもベッドに駆け寄る。
だけど、サイカくんからの返事はない。

「人魚の涙……。これで、サイカくんの願いがかなうよ……!」

わたしが人魚の涙を見せても、何の反応もなかった。
ただ、痛いほどの沈黙だけが落ちる。

「サイカくん……」

わたしは震える声で、まじまじとサイカくんの顔を見つめる。
眠っている表情は、今もどこか苦しそうだった。
その姿は、今にも(あわ)になって消えてしまいそうで……。

――ふと、人魚の涙の伝説を思い出す。
悲しい言い伝えを。

もし、このまま、目を覚まさなかったら、サイカくんは……。
ざわざわと胸が騒ぐ。
言い知れない不安がまとわりついた。
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