星を救いたいわたしと、かりそめのあなたたち
「何でもないもん……!」

わたしは頬をふくらませて、ぷいっとそっぽ向く。
それ以外は言葉が出てこないので、ずっとだまっていた。
それなのに。
沈黙なんて、気まずいはずなのに。
それでも、男の子は静かにそばにいてくれたんだ。
……結局、根くらべはわたしの負けだった。

「……わたし、スイーツが好き」

しばらくの沈黙の後、わたしは夢見るようにつぶやく。

「将来の夢は毎日、おいしいスイーツを食べること。でも、家がビンボーだから、絶対にかなわないんだ……」

口にしたら、心がズキンとした。
しゅんと肩を落としていると、男の子はわたしの隣のブランコに座った。

「幸せって、何だと思う?」
「幸せ……?」

唐突な質問に、わたしはぽかんとする。

「人によって様々だけど、僕は夢を持てることだと思う」

そうつぶやくと、男の子は少し寂しそうに微笑んだ。

「その夢のかけらを、世界中にまいていけば、そこにはきっと、すばらしい意味が宿るかもしれないよ」

秋の日ざし。
ひとひらの光が、名前も知らない男の子の頬に触れて消えた。
笑っているのに、どこか泣いているようにも見える。
その姿は、今にも消えてしまいそうにはかなくて、ぐっと胸が苦しくなった。
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