星を救いたいわたしと、かりそめのあなたたち
(それに甘い香りの正体って……葉?)

見上げた大きな木を埋めつくすのは、深い緑にそまった葉。
あざやかな葉が、わたしのそばに落ちて、響いて、広がっていく。
まるで、夜空に咲く花火のようだった。

「わあっ……きれい……!」

感動したわたしは思わず、木に触れようとしたけれど。

「ダメだ! 触るな!」

突如、男の子にぐいっと引き止められてしまう。
その瞬間、わたしの腕にからみつこうとしたのは太い枝。

「ひいっ!」

わたしは思わず、悲鳴を上げる。
そう――わたしに襲いかかろうとしたのは、目の前の大きな木だった。
しかも、それが自身の太い根を足のようにうごめかせながら、津波のようにこちらへと押し寄せてくる。

「ここから逃げよう!」

逃げるって、どこに。
そう疑問を投げかけようとした時には、もう手首をつかまれていた。
そのまま、男の子に引っぱられるように駆け出していく。
どこに行くんだろう?
だけど、つかまれた手を振りほどくことなんて到底できなくて。
手首にふれる彼の体温を手放したくはないと思ってしまって。
ただ、風を切って、わたしたちは駆けていった。
今、何が起きているのかな。
何にも分からない。
頭が真っ白になって、なかなか状況に追いつけない。
だけど、わたしを置いてきぼりにしたまま、大きな木は足を生やして追いかけていく。
< 4 / 111 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop