星を救いたいわたしと、かりそめのあなたたち


ざわざわと騒がしい放課後。
ユリちゃんと別れた後、わたしは周防くんと一緒に帰ることにした。
目的はもちろん、星が本当の意味で、人間に生まれ変われる方法を探すためだ。
廊下を歩いていると、別の学年の女の子たちがとおりすぎていく。

「サイカくん。昨日、病気で入院したんだって」
「ええっ! そうなんだー。響野くん、大丈夫かな」

その会話に、わたしはドキンと心臓がはねた。
サイカくんが入院したという話は、学校中をかけめぐり、お昼休みに入る頃は一年のわたしたちの耳にも届いていた。
サイカくんは、王子様のようなイケメンだ。
きっと、学年問わず、女の子たちに大人気なんだろう。
とっくに分かっている事実。
それなのに、胸が苦しくて、もやもやして泣きそうになるのは何故だろう。
悶々(もんもん)とした気持ちのまま、校門をくぐり、マンションの方向へ歩き出す。
空を見れば、季節を感じることもできるし、時間を知ることもできる。
だけど……。

時間――。

その重みが、あまりにも苦しい。
サイカくんに残された時間はおそらく、あとわずかなのだろう。

『幸せって、何だと思う?』

あの時は夢を持てる意味が知れて、ただ、嬉しかったけれど……。
あなたは一体、どんな想いでかけてくれた言葉だったんだろう――。
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