政略婚の妻に、王は狂おしく溺れる ―初恋の面影を宿す王妃―
「それとももう、婚約者殿はいらっしゃるのか?」

ラディウス王の問いに、私は返事を詰まらせた。

ここで「いいえ」と言えば……この場で婚姻が決まってしまう。

だが否定しなければ、父や国を裏切ることになる。

視線が揺れる。

ラディウス王の瞳が、逃げ場のない檻のように私を捕えていた。

「待って下さい。」

お兄様が私の前に立ちはだかるようにして、声を上げた。

「突然のことに、妹は動揺しています。これ以上の詮索はお止めください。」

ラディウス王の唇がわずかに歪む。

「ほう……姫君なら、交渉の道具になることは分かっていたはずだが?」

――交渉の道具?

心臓がきゅっと縮む。

この男……私を物のように扱うつもりなのか。

「父上、リフィアを交渉の条件にはできません。」

お兄様の声音は固く、鋭かった。

「南方は……諦めましょう。」
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