政略婚の妻に、王は狂おしく溺れる ―初恋の面影を宿す王妃―
心臓がひときわ強く鳴った。

恐ろしいはずなのに、その眼差しから視線を逸らせない。

戦場を制した王の、研ぎ澄まされた気迫。

けれどその奥に、熱を孕んだ何かが揺らいでいた。

「……」

喉がひとりでに鳴る。

私の頬を染めるこの熱は、恐怖だけではない――

そう気づいてしまった自分に、さらに胸が乱れた。

するとラディウス王が、一言付け加えた。

「もし、南方がダメなら……五地方だけでいい。その代わり――」

そこで言葉を切り、私の方へと視線を向ける。

「姫君を、妻に頂きたい。」

「えっ……⁉」

全身に電流が走ったように、体がビクつく。

まさか、和平交渉の場で自分が条件にされるなんて――。

「あの……」と声を絞り出すが、喉が震えて続かない。
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