政略婚の妻に、王は狂おしく溺れる ―初恋の面影を宿す王妃―
次の瞬間、大広間は拍手に包まれた。

父王が満足そうに微笑み、お兄様は安堵の吐息をこぼす。

ラディウス王は私の手を離さず、そっと引き寄せた。

その掌は戦場を知る硬さを持ちながらも、包み込むような温もりを帯びていた。

私は初めて、この腕の中で生きていく自分の未来を、ほんの少しだけ想像した。

翌朝、王宮の中庭は早朝の冷たい空気に包まれていた。

私は父の前に立ち、旅支度を整えていた。

隣国への出立――それは新婚早々、夫であるラディウス王との初めての旅路でもあった。

「ではお父様、行ってきます。」

父は小さく頷き、「ああ、健やかで。」と静かに送り出してくれた。

その眼差しには、娘を手放す寂しさと、国の未来を託す決意が混じっているようだった。

馬車の前に立つと、磨き上げられた黒い車体に私の姿が映った。
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