政略婚の妻に、王は狂おしく溺れる ―初恋の面影を宿す王妃―
扉を開けて乗り込むと――そこには、すでにラディウス王が座っていた。

「……どうして?」

思わず問いかける私に、王は短く答えた。

「一人ではつまらないだろうから。」

それは何気ない一言に聞こえたけれど、私の胸は不思議と熱くなった。

きっと、この人は本当に私と一緒にいたいのだ――そう思えてならなかった。

昨日の結婚式でのあの声が蘇る。

誓いの言葉を導く、低く優しい響き。

戦場に立つ男の声とは思えないほど温かく、包み込むような音色だった。

窓の外を流れる景色の中、私はこっそりと彼を横目で見た。

堂々とした背筋、穏やかな表情。

彼がこちらをふと見やれば、視線が重なり、逃げ場を失ったように心臓が跳ねる。

馬車の中は、車輪の規則正しい音だけが響いていた。

「夕方には着くと思う。」

「はい。」

「夕食は口に合わなかったら、他の物を用意するから、遠慮なく言って欲しい。」

「……はい。」
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