政略婚の妻に、王は狂おしく溺れる ―初恋の面影を宿す王妃―
――この人は、どれほどの悲しみと重責を抱えて生きてきたのだろう。

そう思うと、私の胸の奥に小さな痛みと、言葉にできない温かな感情が同時に芽生えていた。

馬車の中は、ゆったりとした揺れと車輪の音に包まれていた。

しばらくすると、隣のラディウスが静かな寝息を立てはじめる。

大きな身体がわずかに前後に揺れ、首がこっくりと傾いては戻る。

その眠りは、どう見ても心地よさとは程遠いものだった。

私はそっと腰を上げ、彼の隣に移動する。

そしてためらいながらも、自分の膝を差し出し、その頭をそっと受け止めた。

硬く整った髪が私の太ももに触れ、体温がじんわりと伝わってくる。

「ん……」

小さな声と共に、ラディウスの瞼がかすかに開いた。

眠たげな視線が私を見上げる。

「こうすると……安心するでしょう?」

「……うん。」
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