政略婚の妻に、王は狂おしく溺れる ―初恋の面影を宿す王妃―
それだけ呟くと、彼はまた瞼を閉じた。

けれどその表情は、さっきまでよりも穏やかで、深い安らぎを湛えているように見えた。

――この人の癒しになりたい。

そんな想いが、静かに胸の奥に芽生えていた。

丘の上の空気は、馬車の中よりずっと澄んでいて、やわらかな風が頬を撫でた。

「ラディウス王、少し休憩しましょう。」

副将オルフォンが馬車の扉を開ける。屈託のない笑顔で、彼は私達を見て茶化した。

「おっ、早速奥さんに甘えているな。」

私は思わず、ふふっと笑みを漏らす。

「ああ、オルフォンか。」

ラディウスは身体を起こすと、大きく背伸びをした。

その動作ひとつで、長旅の疲れを少しだけ吐き出したようだった。

「お昼にしよう。王妃の実家がよこしたお弁当がある。」

「そうか。」

差し出された包みを開けると、ふわりと香ばしいパンの香りが広がる。

中には彩り豊かなサンドイッチが詰まっていた。
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