政略婚の妻に、王は狂おしく溺れる ―初恋の面影を宿す王妃―
私も一口サンドイッチを頬張る。パンの柔らかさと具材の味が広がり、思わず笑みがこぼれた。

「うん、美味しい。」

そう言って顔を上げると、ラディウスも同じように微笑み返してくれた。

その笑顔は、戦場で鍛えられた鋼の表情とは違い、まるで陽だまりのように柔らかかった。

胸の奥がふっと温かくなり、この時間がもっと続けばいい――そう願わずにはいられなかった。

馬車は境を越え、見慣れぬ風景が流れ始めた。

城壁の向こうに見えるのは、険しい山並みと深い森。空気まで張り詰めたように冷たく感じる。

「リフィア。」

隣から呼びかけられ、私は背筋を伸ばした。

「はい。」

ラディウスは真剣な眼差しで私を見つめ、低く告げる。

「念のために言っておく。」

その声音には、先ほどまでの穏やかさはなく、鋼のような重みがあった。

「これからは、なるべく俺の指示に従って欲しい。」

「は、はい……」

思わず言葉が詰まる。
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