政略婚の妻に、王は狂おしく溺れる ―初恋の面影を宿す王妃―
まるで見えない脅威がすぐそこまで迫っているような、物々しい空気が馬車の中を満たす。

「何があるか分からない国だから。」

ラディウスは視線を前方に向け、続けた。

「君を守るために、全力を尽くす。」

その言葉は命令というより、強い決意の誓いに聞こえた。

私は小さく息を飲み、うんと頷いた。

胸の奥で、彼にすべてを委ねてもいいという思いが、静かに芽生えていった。

城内に足を踏み入れた瞬間、目の前に広がったのは高くそびえる荘厳な内壁だった。

石造りの壁面には繊細な彫刻が施され、王宮とは異なる重厚な威厳が漂っている。

「ここが我が城だ。」

ラディウスの声に、私は思わず感嘆の息を漏らした。

「うわあ……」

その時、一人の男が私たちの前に現れた。

背筋をぴんと伸ばし、威厳ある態度でラディウスに一礼する。

「ラディウス王、お帰りなさいませ。」

「ああ。」
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