政略婚の妻に、王は狂おしく溺れる ―初恋の面影を宿す王妃―
だが彼は次の瞬間、視線を私に移し、驚いたようにじっと見つめてきた。

「この方は……?」

「俺の妻だ。」

「えっ……? 結婚されたのですか?」

その声音には、明らかな驚きと戸惑いが混じっていた。どうやら急な結婚の知らせはまだ届いていなかったらしい。

「名前はリフィアだ。」

ラディウスは私の背に手を添え、ゆっくりと言葉を続ける。

「よろしく頼む、叔父上。」

――叔父上。

この人は、ラディウスの血縁であり、城の中でも特別な地位にいる人物なのだろう。

彼の目が私を値踏みするように動くたび、胸の奥が少しだけ緊張で締めつけられた。

宰相アンドリューは、どこか物静かで慎重そうな雰囲気を漂わせていた。

「宰相を務めます。アンドリューです。」と控えめに名乗ると、ラディウスが続ける。

「叔父上と言っても、歳はあまり変わらないんだ。」
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