政略婚の妻に、王は狂おしく溺れる ―初恋の面影を宿す王妃―

第2章 三日三晩

湯浴みの湯気が立ち込める中、侍女たちの手は丁寧で、少しくすぐったい感覚が肌を伝っていった。

「お綺麗な体。さぞ、ラディウス王もお気に召しましょう。」と、年配の侍女が微笑む。

私は頬を赤らめながら、前から気になっていたことを口にした。

「ラディウス王はどんな方?」

若い侍女が真っ先に答える。

「お優しい方です。」

すぐに別の侍女が続けた。

「頼もしいですよ。」

さらに年長の侍女が誇らしげに笑う。

「勇ましい方です。」

三者三様の褒め言葉に、胸が温かくなる。

ふと、胸の奥に引っかかっていた疑問をそっと尋ねた。

「側室はいるの?」

侍女たちは一瞬、目を合わせ、声を揃えるように答えた。

「いらっしゃらないと思います。」

「ラディウス王はいつも一人寝をされる方なので。」

その言葉に、私は小さく息を吐いた。

――本当に、私が初めての妻なのだ。

自然と口元がほころび、頷きながらその事実を胸の奥で噛みしめた。
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