政略婚の妻に、王は狂おしく溺れる ―初恋の面影を宿す王妃―
湯気に包まれた浴室で、年長の侍女がふと真顔になる。

「王妃は、閨の事をどこまでお知りですか?」

唐突な問いに、私は言葉を探した。

「ええっと、それが……初めてで。」

すると若い侍女たちが、まあっと声を上げて微笑む。

「何も怖がることはありませんよ。ラディウス王が全て教えて下さいます。」

「そうなの?」

少し安堵が胸をよぎる。

まるで、ラディウスが家庭教師のように、私に一から教えてくれる姿が頭に浮かんだ。

「そうですね、一つアドバイスするとしたら――」

年長の侍女が、そっと耳元に唇を寄せる。

湯気の中で、その囁きは妙に熱を帯びて聞こえた。

「少し大げさに反応されると、情熱的に見えますよ。」

耳朶にかかる吐息に、私は思わず背筋を震わせた。

まるで今夜を予告するようなその言葉に、心臓が早鐘を打ち始めるのを抑えられなかった。
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