政略婚の妻に、王は狂おしく溺れる ―初恋の面影を宿す王妃―
「言って。」

私の声はかすかに震えていた。

胸に広がる不安と、彼を知りたいという切実な想いが混じって。

「昔の知り合いを思い出していた。」

短い一言に、私は全てを悟った。

この人には、私の知らない“忘れられない人”がいるのだと。

「……恋人?」

震える声で尋ねると、ラディウスは静かに首を横に振った。

「恋人に……できなかった。」

その言葉に、胸の奥がズキリと痛む。届かなかった想いほど、強く残るものだから。

「今でも……好き?」と問う私の勇気は、答えを知るのが怖かったからかもしれない。

けれどラディウスは答えの代わりに、私の唇を深く塞いだ。

そして息を継ぐ間もなく、真っ直ぐな視線で言い切る。

「今は、リフィアが好きだ。」

その瞳に偽りはなかった。胸の奥が熱くなり、涙がにじむ。

——私を選んでくれている。
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