政略婚の妻に、王は狂おしく溺れる ―初恋の面影を宿す王妃―
「……公務に行かなくていいの?」

「新婚の時くらい、休んでもいいだろう。」

そう言って彼は私の肩を抱き寄せる。

ラディウスはこれまで、休むことさえ許されなかったのだろう。

今はようやく、私の隣で安心しているように見える。

その姿が愛おしくて、つい問いかけてしまった。

「ねえ……どうして、その人を恋人にできなかったの?」

ラディウスの瞳がわずかに陰りを帯びる。

「……既に恋人がいたんだよ。」

その言葉に、胸の奥がざわついた。叶わなかった想い。

彼が今も痛みを抱えているのだと、肌越しに伝わってくる。

「一度も、好きと伝えた事はなかったの?」

私の問いに、ラディウスは少し笑って答えた。

「言おうと思ったが、先に手が出た。」

「えっ……」

「抱いたんだ。一度だけ、彼女のことを。」

胸がずきりと痛む。好きな人との逢瀬。

きっと甘く、幸福なひとときだったのだろう。
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