政略婚の妻に、王は狂おしく溺れる ―初恋の面影を宿す王妃―
私を話題にしているのに、肝心の本人はもう一歩も動けず、ただ布団に包まっているだけ。

隣にラディウスはいない。

けれど、視線を向けずとも分かる。あの人は、そこにいて――私を見ている。

「昨日まで処女だったんだ。まだ抱かれ慣れていないんだろう。」

ラディウスは淡々とフォークを口に運びながら言った。

「だったら、少しは控えるべきだろう。」

オルフェンの言葉に、ラディウスは短く息を吐く。

「それができないんだ。」

副将は眉を寄せ、無言で王を見つめた。

「どうしたんだ。女に溺れたことのないラディウス王が、たった一人の王妃に溺れているのか。」

「……そうかもしれない。」

ラディウスの視線が、ベッドに伏したままの私を射抜いた。

心臓が跳ねる。あの深い瞳が、誰にも見せぬ熱を宿している。

「好きだと言ってくれた。俺のことを。」

静かな声が、蝋燭の炎に揺れる。

「ラディウス王……」と、オルフェンが思わず低く名を呼んだ。
< 51 / 54 >

この作品をシェア

pagetop