政略婚の妻に、王は狂おしく溺れる ―初恋の面影を宿す王妃―
南方五地方――そこは、先代の王が攻め滅ぼした地域だった。

彼らが兵を挙げたのは、奪われた土地を取り戻すため。

「南方の半分か……それだけで満足するのか。」

父王の問いに、ラディウス王の眉がわずかに跳ね上がる。

「南方は、我らアシュ族のものだ。勝手に侵略したのは、そちらだ。」

その低い声には、怒りと誇りが滲んでいた。

場の空気が一気に張りつめ、私は息を飲む。

もしこの場で交渉が決裂すれば、再び剣が交わされ、血が流れる。

そんな未来を想像しただけで、心臓が早鐘を打った。

気づけば私は椅子から身を乗り出し、ラディウス王と父王を交互に見つめていた。

その時だった。

ふと、ラディウス王と視線がぶつかった。

まるで深い湖の底に引きずり込まれるような、鋭くも熱を帯びた瞳。
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