政略婚の妻に、王は狂おしく溺れる ―初恋の面影を宿す王妃―
「……美しい。」

低く漏れたその声を、私は確かに聞いた。

頬が一瞬で熱くなり、胸の奥がざわめく。

誰かに美しいと言われたことなど、一度もなかった。

「どうなされた、ラディウス王。」

父王の問いに、ラディウス王はわずかに目を伏せ、静かに答える。

「……まさか、このように美しい姫君がいらっしゃるとは存じませんでした。」

その瞬間、父王の瞳に閃きが走ったのを、私は見逃さなかった。

私は顔が熱くなるのを抑えられなかった。

さっき、確かにあの男――ラディウス王は私を「美しい」と言った。

しかも、口先だけの社交辞令とは思えない声音で。

ちらりと視線を向ける。

その瞬間、また目が合った。

真っ直ぐに、まるで射抜くように私を見ている。

何かを探るようでもあり、奪うと決めた獲物を見定めるようでもある。
< 8 / 54 >

この作品をシェア

pagetop