お兄ちゃん、すきだよ。
重い屋上の扉を開けると、冷たい風が私の前髪を揺らした。
だけど、そのひんやりとしか風が気持ち良い。
屋上の中でも一番きれいな景色が見える場所を選び、私は柵にもたれかかる。
校庭からは、ガヤガヤと楽しそうな声が響く。
隣の街道を通る車の音も、聞こえてくる。
しかし風の音に耳をすましていると、少しもうるさくは感じない。
不思議。
風の音って、こんなにおだやかな気持ちになるんだね。
こらえていた涙が、一粒だけこぼれて落ちた。
「春乃っ!」