ゼノさんの汚行祭り

牧師ゼノとレビトラ

――神(俺)の名のもとに、この身を捧げる。

教会の静謐な礼拝堂。ステンドグラスから差し込む柔らかな光が、跪く信徒たちの頭を撫でる。その中央に立つのは、ゼノと呼ばれる男。分厚い聖書を握りしめたその手は、鍛え上げられた戦士のそれを思わせ、黒い聖職衣の下からは、常人を凌駕する肉体の膨らみが覗いていた。

「……アーメン」

深みのある声で祈りを締めくくると、信徒たちがゆっくりと立ち上がる。彼らは皆、無意識にゼノの存在に引き寄せられていた。特に女性たちの視線は熱く、敬虔なふりをした欲望が瞳の奥で蠢く。

「今日も素晴らしい説教でした、ゼノ先生」
「あの……私、少し悩みがあって……」

若い女性信徒たちが彼を取り囲む。ゼノは微笑みながらも、その視線はすでに別のものへと向かっていた。

(……我慢の限界だ)

司祭館の自室に戻ると、ゼノはローブを脱ぎ捨てた。鏡に映るのは、神(己)への奉仕者とは思えぬ逞しい肉体。そして、ズボンの上からでも明らかな「罪の象徴」が、布を押し上げている。

「……俺を許せ」

そう呟くと、ゼノは引き出しから小さな瓶を取り出した。中には青い菱形の錠剤――レビトラ20錠がぎっしりと詰まっている。通常の用量を遥かに超えるその数に、彼は嗤った。

「……これぐらいで枯れるとは、いかがなことよ」

一気に瓶を傾け、錠剤を口に放り込む。喉が軋むほどの量を飲み干し、ゼノはベッドに倒れ込んだ。

――そして、地獄が始まった。

最初は鈍い熱だった。下腹部から這い上がる炎が、全身を駆け巡る。筋肉が膨張し、血管が脈打つ。ゼノの巨体がベッドの上でうねり、シーツが裂ける音が響く。

「……ぐ!?……がっ……はぁ……!?」

通常ならば死に至る量の薬理作用が、彼の異常な肉体をさらに暴走させた。皮膚は赤く爛れ、吐息は熱霧となって立ち上る。そして、彼の下半身は――

「クソが……っ! こいつ……収まらねぇ……あぁっ!」

神(己)の教えも戒律も、今や意味をなさない。理性を食い尽くす欲望の渦。ゼノは自らの巨大化した性器を握りしめ、荒々しく喘ぎ始める。

「はあ……はあ……っ! ぁっ……ゔっ……ぐっ!」

脳裏に浮かぶのは、説教後に寄ってきた可憐な信徒たちの顔。純白のドレス越しに覗いた柔肌。跪く際にこぼれた巨胸の谷間。

「っし……っ! このままじゃ……あっ……穢せ……!」

突如、扉がノックされる。

「ゼノ先生……? お声が……大丈夫ですか?」

――それは、常に彼を慕う無垢な少女信徒の声だった。

ゼノの目が、狂気の色に染まる。

(……俺を召すな)

もはや祈りではなく、宣告。

(ごめんな……俺、本当に馬鹿だわ……)

次の瞬間、扉が内側から破壊された。

――その日、教会からは、悲鳴と嬌声が決して止むことはなかった。

(完)
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