ゼノさんの汚行祭り

牧師ゼノとシアリス

――それは、とある辺境の教会で起こった。

夕暮れの光がステンドグラスを彩り、祭壇に跪く一人の男の影を長く伸ばしていた。その男――ゼノは、分厚い聖書を握りしめ、汗ばんだ額を十字架に打ち付けながら祈りを捧げている。
彼の声は震え、筋肉隆々とした腕が僧服の袖を張り裂かんばかりに力んでいた。
ゼノは元々、戦士として名を馳せた男だった。しかし、ある日「殺生を悔い、信仰に目覚めた」として牧師となった。だが、その実――彼を信仰へ駆り立てたのは、戦場で培われた「飽くなき性欲」を抑えるためだった。

「……くそ、まただ……」

彼の視線の先には、信者の若い娘たちがいた。純白のドレスに包まれたその肢体は、ゼノの理性を容赦なく蝕む。彼は拳を握り締め、爪が掌に食い込むほどに我慢した。

「こんな俺では……牧師など務まらない……」

そう呟いた瞬間、祭壇の陰から小さな瓶が転がり出てきた。

「……これは?」

拾い上げると、ラベルには「シアリス」と記されている。――強力な精力剤だ。

「……シアリス」

しかし、彼の脳裏にはある考えがよぎった。

「もし、この薬で欲望を爆発させ、全てを吐き出し切れば……その後、ようやく清らかな人生が訪れるのではないか?」

迷いは一瞬で消えた。

「……俺を許せ」

瓶の蓋を開け、中身を一気に飲み干す。

――その瞬間、全身に熱が駆け巡った。

「……はっ……!?」

血管が脈打ち、鼓動が耳元で轟く。僧服の下で、彼の肉体はさらに膨張し、もはや布が耐えられない。

「……はぁ、はぁ……これ…は……がぁっ……!」

祭壇を掴み、木の台が軋む。信者たちが驚いて振り向くが、ゼノの目はもはや理性の光を失っていた。

「……みんな……逃げろ……早く!!!!」

最後の良心で叫んだが、遅かった。

次の瞬間、ゼノの僧服が爆ぜ、鍛え上げられた巨体が露わになる。

「良かっ、た…まだ…心、に…善心が…あっ……た……」

彼は祭壇に膝をつき、頭を垂れた。熱にうなされ、激しい鼓動が全身を貫く。

「……これ、で…いい……」

誰もいない教会で、ただ一人、彼の馬鹿でかきどデカい喘ぎ声だけが響き渡った。

やがて、薬の効果は去り、ゼノは虚脱感に包まれる。

「……」

彼は静かに目を閉じ、十字架に祈りを捧げた。

「……ごめんな……俺、馬鹿だわ……」

しかし、その手はまだ震えていた。

――教会の扉は閉ざされたまま、誰も彼の罪を知ることはなかった。

(完)
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