Devil's Night
 
「じ、じゃあ、私、もう行くね」


 そう言うと、カイは驚いたように起き上がった。


「今日は塾に行く前に、ちょっと寄っただけだから」


 それは嘘だった。ここに立ち寄った本当の理由は、書店で見かけた香織の学校の生徒会長と、私の知っている少年が同一人物なのかどうか、一刻も早く確かめたかったから……。


「ねぇ、美月」


 立ち上がりかけた私をカイが呼び止める。


「美月は僕のこと、どう思ってるの?」


「私は……」


 なぜか答えるのを躊躇した。カイの瞳が私の答えを待っている。目の前の彼は、私にはもったいないほどの存在だ。ただ、その優しさが、作りもののように感じられることがある。そして、美しさが氷のように見えることも……。


 裏切られたことも、冷たくされたこともないのに。
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