Devil's Night
その日は、カイの憂いを含んだ表情を何度も思い出し、学習塾での授業にも身が入らなかった。何となく『好き』と言ってしまったことを、悟られたような気がして仕方ない。
――明日、もういちどカイに会って、正直に『まだわからない』って言おうかな。でも、そんなことを、改めて言うのって……。
あれこれ考えている内に、授業が終わる。今日は何も頭に入らなかった。
塾からの帰り、駅前の広場に人だかりができているのを見た。人の輪の中心で、ヒップホップの軽いリズムに合わせ、ふたりの男の人が踊っている。兄弟だろうか。長髪を編み込んでいるふたりは、スラリとした体型とエキゾチックな顔立ちがよく似ている。
息の合ったしなやかな動きに目を奪われ、私も大勢のギャラリーに混じって、彼らの踊りを見ていた。
けれど、私が観衆の輪に加わってまもなく、ふたりのダンサーによるパフォーマンスは終わり、人の輪がほどけ始める。彼らの追っかけらしき女の子たちを残し、ギャラリーも散って行く。
ケータイで時刻を確認すると、9時だった。
――もうこんな時間!
学生カバンを持ち直して、家路を急いだ。