恋を知らない恋愛小説家は、イケメン担当者と疑似恋愛をする
 月森さんの手に引かれ、私たちはカフェに入った。落ち着いた雰囲気の、素敵なカフェだ。どうやら事前に予約していてくれたらしく、待つことなくすんなり席に通される。
 
「さて、何にしましょうか」

 向かいに座った月森さんは、メニューを見ながら微笑んだ。その姿が1枚の絵になってしまうほど、様になっている。正直、モデルの雑誌撮影と言われても違和感ない。

「……」
「先生?」
「あ、えっと、…すみません。ちょっと、見惚れてました」

 顔に熱が集まるのを感じながらも、素直に気持ちを伝える。月森さんは一瞬きょとんとしたものの、小さく笑う。

「面と向かって言われると、照れちゃいますね」
「すみません…」 
「いえ、嬉しいのでどんどん伝えてくれると嬉しいです。折角の情報収集なので、色々と感じたことは遠慮なく書き留めてくださいね」
「ありがとうございます」
 
 これがメロいという感情か…?よく分からないけれど、言葉の引き出し方が上手すぎる。しかも、月森さんの笑顔があまりにも素敵で、私はそればかりに気を取られてしまう。

 気を紛らわせるようにメニューを開き、何を食べようか選ぶ。パンケーキなどのスイーツ系もあるが、サンドウィッチなどの昼食系もある。
 
「遠慮せずに注文してくださいね」
「ありがとうございます。…月森さんは決まりましたか?」
「はい。僕はカルボナーラにしようかと思っています。このお店のイチオシらしいので」
「そうなんですか。じゃあ私もそれにします」
「お好きなもので大丈夫ですよ?」
「カルボナーラも好きなので」
 
 そう答えると、納得したらしい月森さん。そのまま店員さんを呼び、注文を済ませてくれる。

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