まだ触れられたくて、でも触れたい。
夜に溶ける距離、深まる想い



夜のアパート。窓の外には淡い月光が差し込み、室内のランプの灯りと混ざって柔らかな影を作っていた。
杏奈はソファに座り、膝に軽く膝掛けを巻きながら、紫苑と向き合っていた。肩が自然に触れ合う距離。言葉は少なくても、互いの存在を感じるだけで心が温かくなる。

「……今日はありがとう。菜央ちゃんと遊んで、楽しかったです」

「俺も……杏奈さんがいてくれると、家の中が安心します」

声のひとつひとつが、胸の奥にそっと触れる。杏奈は顔を少し下げ、手のひらを握りしめる。
(……こんなに自然にそばにいられるなんて……)
心の奥が、ふわりと軽くなる。

紫苑の手がそっと杏奈の手に触れる。指先が重なるだけで、胸の奥がじんわりと熱くなる。呼吸が少しだけ速くなり、体が自然に彼に寄せられる。

「……無理に強がらなくていいんです。俺には、素直な杏奈さんのほうが、ずっと魅力的です」

低く、穏やかに響くその声に、杏奈の心は少しずつ溶けていく。彼の瞳を見ると、迷いも不安も自然と消え、安心感が広がった。

「……紫苑さん……」

名前を呼ぶ声に、紫苑は微笑みながら、ゆっくりと唇を重ねる。キスは軽く、でも互いの鼓動と想いを確かめるように丁寧で、温かかった。
背中をそっと押し付けるように、紫苑の手が腰に回る。杏奈は自然に身を預け、心の奥まで熱が広がるのを感じる。

「怖がらなくていい……俺が、ちゃんと受け止めます」

囁きに、杏奈の指先が紫苑の胸に触れる。互いの呼吸と鼓動が混ざり合い、時間の感覚も忘れるほど静かで濃密な夜。

ソファの上で、肩と肩が触れ合うだけの距離なのに、心はもう少しずつ溶け合い、身体の奥まで互いを意識している。
杏奈は小さく息を吐き、紫苑の肩に頭を預ける。紫苑も自然に頭を傾け、二人の間に小さな安心感と温もりが流れた。

(……この距離で十分、心が伝わるんだ……)

夜の静けさが、二人の時間をそっと包み込み、窓の外の街の灯りが、まるで二人の心を見守っているかのようだった。

杏奈は胸の奥で、小さく確かな喜びを感じた。紫苑との距離はまだ完全ではないけれど、互いの心と体を少しずつ預け合える“安心の時間”が、静かに始まっていた。


  ***

 夜が深まり、菜央ちゃんが眠りについた後。リビングの明かりだけが、二人の輪郭をやさしく照らしていた。
杏奈はソファに座り、膝に軽く膝掛けを巻いている。紫苑は隣に座り、彼の肩と自分の肩が自然に触れる距離。
言葉は少ない。けれど、互いの存在だけで胸の奥がじんわりと温かくなる。

(……こんなに近くにいるだけで、心が満たされるなんて……)

杏奈の指先がそっと膝掛けの下で紫苑の手に触れる。彼の手の温もりが指先からじわじわと伝わり、体全体が小さく震える。胸の奥が甘く熱を帯び、自然と息が少し早くなる。

「……今日は、ありがとう。こうして少しだけでも、一緒に過ごせて」

「こちらこそ……杏奈さんがいてくれるだけで、部屋が明るくなる気がします」

紫苑の声は低く、でも柔らかく響き、言葉以上に心に届く。杏奈は思わず顔を少し下げ、肩を小さくすくめる。
(……こんなふうに素直になっていいんだ……)

紫苑の手が、さらに杏奈の手を包み込む。手のひらの温もりが指先から腕、肩まで伝わり、心が自然に彼に寄せられていく。体がふわりと溶けるような感覚。

「……怖がらなくていいですよ。俺が、ちゃんと受け止めます」

囁かれたその言葉に、杏奈の胸がふくらみ、心の奥の不安が少しずつ溶けていく。
名前を呼ぶ声も、吐息も、互いに届く距離。
ゆっくりと唇を重ねると、軽く触れるだけのキスが、次第に温かく、深く、体と心を絡めるようになっていく。

「……紫苑さん……」

呼びかける声に、紫苑は小さく微笑みながら、そっと杏奈を抱き寄せる。肩と肩、胸と胸が触れ合い、心臓の鼓動が互いに響き合う。
杏奈は恥ずかしさと嬉しさに頬を赤く染めながらも、自然に身を預ける。理性ではなく、心の奥の感情が体を支配する感覚――。

「俺も……杏奈さんを、こうして近くで感じたかった」

紫苑の言葉に胸が高鳴り、体の奥が甘く熱を帯びる。手のひらが腰に回り、背中を押し付けられるように抱き寄せられると、息が詰まりそうになるが、心地よさに身を委ねずにはいられない。

互いの呼吸と鼓動が重なり合う。指先や唇が触れるたびに、心の距離も少しずつ近づいていく。杏奈は目を閉じ、唇を彼に預けることで、言葉にならない想いを伝えようとする。
(……この人の腕の中なら、どこまでも甘えていいんだ……)

ソファの上で、時間の感覚も忘れるほど濃密なひととき。互いの体温を感じながら、杏奈は初めて、自分の「女」としての感覚を素直に受け入れた。

夜の静けさの中で、二人の距離は少しずつ、そして確かに溶け合っていった。互いの心と体を感じながら、言葉にならない想いが夜の空気に溶け込み、柔らかく、深く、結ばれていく。
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