落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
 貴族ではないアイリスには少々敷居が高く感じるのではないか。緊張して観劇どころじゃない彼女を想像できる。もっとゆったりと楽しんでもらいたい。

「平民の女性が楽しめる所はないか?」

「あ、そうですか。自分の妻も平民出身なので、よく市場で食べ歩きしてましたっ。あとはラヴィーの丘でのんびり花を見たり、展望台で王都を眺めたりしましたねっ」

「市場で食べ歩き……」

 彼女がリスのように口いっぱいに頬張る姿は愛らしいし好ましいが、それではいつもと代わり映えしないな。
 しかも、ラヴィーの丘では先日魔物に襲われたばかりだ。あの恐怖を思い出させるわけにはいかない。

「他にはないか?」

「ほか……、あ、贈り物! 花やアクセサリーを贈るのとかはっ? 女性は皆喜ぶのではないですかね」

「贈り物か……」

 そうだった。俺はまだ背中の傷跡の治療をしてもらっているお礼をしていない。何か、アイリスが喜びそうな物を贈れたらいいと思った。

「デービス、参考になった。感謝する」

「いえいえ、副団長のお役に立てたなら何よりですっ」

 デービスは手を振り、白い歯を見せて笑った。

 有益な情報を得られたな。まずは、何を贈るか考えて……と思い巡らせていると、

 ドンドンドンッ。
 ドアが激しく叩かれる。

「しっ、失礼いたしますっ。フォーレン副団長っ!」

 団員の一人が血相を変えて執務室に飛び込んできた。

「どうした!?」

「魔物討伐部隊から、援護要請ですっ。魔物の群れがっ、王都の城壁を突破した模様ですっ」

「なんだと!?」
「えっ!? それはまずいですねっ」

「デービス、至急援護に向かうぞ」
「はっ」

 俺達はすぐさま執務室を飛び出した。

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