落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
あんなに使ったこの魔道具も、もう使う事は無くなってしまった。ライオネル様と市場に買い出しに行っていた、あの頃が懐かしい。
「はぁ……ライオネル様に……会いたいな……」
そう声に出したその時、持っていた魔伝言鳩が急に光り出した。そしてバタバタと翼を羽ばたかせ、私の手から離れていく。
「え、ちょっと、なに?」
どうして? 私、伝言なんて何も……。
そう思った時、私はさっき呟いた独り言を思い出して、さぁっと血の気が引いた。
「え、え、嘘、嘘、待って! 待ってよ!」
空中に飛んでいる魔伝言鳩を捕まえようと必死に手を伸ばすが、時既に遅し、スッと姿を消してしまった。
「うぎゃーっ、うそ――っっ!!」
恥ずかしさのあまり奇声を上げ、私は頭を抱えて座り込んだ。
行っちゃった……。さっきの言葉をライオネル様に聞かれちゃう、どうしよう。なんて思われるだろう。
羞恥心と不安と自己嫌悪で涙が滲んだ。取り消しの機能を付けて下さいよ、アンディさ〜ん!
その時、コンコンッと部屋の外からドアが叩かれ、ドキッと心臓が飛び上がった。
「アイリス様、どうしましたか? 大丈夫ですか?」
外からナタリーの心配する声が聞こえてくる。さっきの悲鳴が隣の部屋にいるナタリーにまで聞こえてしまったらしい。
「あ、ごめん。何でもないの。えっと、その……、ちょっと、大きな虫がいてびっくりしたの」
「そうなんですか? 私が退治しますよ!」
「えっと、もう追い出したから平気よ。ありがとうナタリー」
「そうですか。また虫出たら私に言ってくださいね、やっつけますんで!」
ナタリー、頼もしい……。
足音が遠ざかり、隣の部屋のドアが閉まる音がした。
どうにか誤魔化すことができて、私はふうっと息を吐く。
気持ちを落ち着かせていると、ふと頭上に白鳩が旋回していることに気が付いた。
もしかしてライオネル様からの返信!?