落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
 慌てて立ち上がり手のひらを出すと、白鳩は私の手の上に収まった。

「あわわっ、どどどうしよう。緊張する……」

 心臓がどくどくと音を立てて、手に汗が滲む。

「すー、はー、すー、はー。……よしっ」

 何回も何回も深呼吸をしてから、震える指先でくちばしを突っついた。

『ライオネルだ。夜分にすまない』

 やっぱりライオネル様からだ。私は緊張しながら続く言葉に耳を傾ける。

『えー、今度の王家主催の夜会に君も参加すると聞いたのだが、も、もしまだパートナーが未定というのなら、お、俺に務めさせてもらえないだろうか?』

 魔伝言鳩はそこでくちばしの動きを止めた。
 パートナー……? ライオネル様がパートナーを務める……? 
 意味が理解できなくて、何度も言葉を反芻する。

 えっ! パートナー!? や、やった、やったわ! ライオネル様から誘ってくれるなんて、夢のようだわ!

 顔がにやけてくるのを必死に抑え、机の上の魔伝言鳩を一枚取った。

「は、早く返事しなくちゃ!」

 よろしくお願いしますと、何度も頭を下げながら言って魔伝言鳩を飛ばした。飛ばした後に、はたと気づく。

 あれ? 最初に飛ばした伝言については何も反応が無かったな……。スルーされたかんじ……? 

 ほっとしたような、淋しいような複雑な気分だった。
 少し経ってから白鳩が頭上にふっと現れる。ライオネル様からだろうとすぐに返事を聞く。

『そうか、こちらこそよろしく頼む。……俺も、ずっと君に会いたいと思ってた。夜会の日、会えるのを楽しみにしてる。……おやすみ、アイリス』

 …………ひっ。…………ムリ…………。

 全身が痺れて、魔伝言鳩を胸に押さえながらしゃがみ込んだ。まだ耳の奥に甘い囁きが残っている。

 ライオネル様は私を殺したいらしい。 


 
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