落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
 この声はアンディさんだわ。
 そう思いつつ、近づいてきた男性を見た瞬間に私は驚きの声を上げた。

「え? アンディさん!?」

 アンディさんはいつもの無造作な前髪を後ろに流し、紺色の正装でビシッと決めている。まるで別人のようだった。

「わ、貴族に見えます!」

「アイリスちゃ〜ん、俺、これでも貴族なんだよ? まぁ、貴族っぽくないけどね〜。ど? カッコい〜?」

 無邪気に笑う仕草はいつもと同じだった。

「はい、カッコいいです!」

「ありがと。アイリスちゃんもすごく綺麗だね〜。見違えたよー」

「ありがとうございます」

 アンディさんは私の右手を取ると、手の甲に口づけをするような仕草をした。

「後程、私にあなたと踊る栄誉を与えてくださいませんか?」

「え? えっと……?」

「あは、なんてね〜」

 私が固まっているとアンディさんは悪戯っぽく微笑み、ライオネル様の方を向いた。

「ライオネル、あははっ、なんつー顔してんのさ、怖い怖いっ。じゃあまたね〜」

 そう言うと軽く手を振り去っていった。

「はぁ、嵐のような奴だな」

 ライオネル様が溜息混じりに呟く。
 同感です……。

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