落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
 差し出されたのは、ハンナさんから預かった巾着袋だった。

「あ、はい! そうです!」

 巾着袋を受け取るとコインの重みを確認できた。お金は無事のようだ。

「ありがとうございました。……よ、よかったぁ、うぅ……」

 安心したらまた涙が滲んできた。

「最近市場でスリや強盗が多い。今後も気をつけてくれ」

 スリや強盗……。怖いわ……。騎士様がいてくれて良かった。

「はい」

 私はしっかりと巾着袋を握って、騎士様を見上げた。騎士様は私よりも頭二つ分くらい背が高くて、見上げると首が痛くなりそうだ。
 顔を見合うと、お互いに気づいて声を上げた。

「あっ、あなたは先日の騎士様!」

「君は聖女殿?」

 先日、神殿に怪我をした従騎士を連れてきた、副団長のライオネル・フォーレン様だった。彼は相変わらず無表情で、近寄りがたい雰囲気だった。

「あ、あの」

「なんだ?」

 騎士様の鋭い視線に怯みそうになったが、言葉を続けた。

「いえ、その、従騎士様の怪我の調子は大丈夫でしょうか?」

「ああ、問題は無い」

「そうなんですね。良かったです」

 私はほっと胸を撫で下ろす。私の弱い回復魔法だったので、怪我が再発でもしたらと心配だったのだ。

「ところで君は一人か? 護衛は?」

 騎士様は切れ長な目で、私の周りを一瞥して言った。

「え? 護衛ですか? まさか! ただの見習い聖女ですし、元々平民なので護衛なんて必要ないですよ!」

 私は驚いて、手をぶんぶんと振りながら答えた。
 確かに正式な聖女になれば、平民出身であっても身分は貴族と同等になる。しかし、まだ見習いで貴族出身でもない私はただの庶民なので、護衛を付けるなんて見分不相応だ。
 騎士様は手を顎に当て、何か考え込んでいた。

「買い物の途中なのだろう? 終わったら神殿まで送ろう」

「え? そんな、大丈夫ですよ。いつものことですし。騎士様のお手を煩わすわけには」

「聖女の護衛も任務の内だ」

「ですが……」

「問題はない」

 有無を言わせない雰囲気だ。このまま断り続ければ却って失礼になってしまうと思い、大人しく従うことにした。

「じゃあ……、よろしくお願いします」

 その後買い物を素早く済ませ、騎士様に神殿まで送ってもらったのだった。
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