落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
「あ、ライオネルお兄様!」

 エリゼが声の元に駆け寄っていく。視線を走らせると、黒髪の騎士様の姿だ。
 やっぱり。私はそこで合点がいった。騎士様を見た時に誰かに似てるって思ったけど、エリゼだったんだ。

 漆黒の髪、金色の瞳に、この美貌。なんて美しい兄妹なんだろう。二人が並んでるのを見ると眩しい。
 騎士様の視線がエリゼの後ろにいた私を捉える。

「君は……」

「こんにちは。あの、この間はありがとうございました」

 私は慌てて頭を下げた。

「いや」

「二人はお知り合いだったのですか?」

 エリゼは大きな瞳をしばたかせ、私と騎士様の顔を交互に見つめた。

「知り合いというか……。スリからお金を取り返してくださって……」

「え? それは大変でしたのね。やっぱり一人では危険ですわ。アイリス、一緒に行きましょう」

 エリゼに押し切られる形で、一緒に市場に向かうことになった。



「あれは何ですの?」

「あれは肉を焼いている屋台だ」

「じゃあ、あれは?」

 市場に着いてからエリゼは見るもの全てが珍しいらしく、瞳をキラキラに輝かせてお兄さんである騎士様に聞いていた。

「お野菜ってこんなに種類があるんですね。わぁっ、これなんて赤くて丸くて可愛いですわ!」

 青果の売っている屋台を覗いて感嘆の声を上げている。

「これはトマトだ。食べたことあるだろ?」

「え? トマトソースのトマトですの? これが……?」

 エリゼは大きな瞳をもっと大きくして、トマトをまじまじと見つめていた。
 
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