落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
「お兄様! フォークとナイフがありませんわ! どうやって食べればいいのですか?」

「こうやってかぶりつく」

 騎士様がかぶりつくジェスチャーをすると、エリゼはクレープを見て考え込んでから徐ろに口に入れた。

「ん! おいひーでふわ!」

「ほら、顔にクリーム付いてるぞ」

「どこでふ?」

「ったく。ここだ」

 騎士様はハンカチを取り出して、エリゼの口元を拭っている。ふふっ、微笑ましい。
 実は私もずっと食べてみたかったんだ。買い出しの時に甘い香りが漂っていて気になっていたけど、買い食いできるようなお金も無いし諦めていた。
 私もガブッとかぶりつく。

「!」

 おいしい! このふわふわとろっとしたのがクリーム? ちょっと酸味の効いたベリーソースと合わさって、とっても美味しいわ。これは止まらない!

 私が一心不乱に食べていると、ふと騎士様と目が合う。騎士様はふぅと息を吐いた。

「ほら、君も。ここに付いている」

 そう言って、私の頬をハンカチで拭いてくれたのだった。

「ひゃっ、すみません。でも大丈夫です! ハンカチが汚れてしまいますから、わわっ、きゃっ」

 私はびっくりして後ろに仰け反ると、バランスを崩し後ろに尻もちを付いてしまう。お尻に鈍い痛みが走ったが、それより手に持っていたクレープが無事だったので安心した。

「……セ、セーフ……」

「セーフではないだろ」

「アイリス、大丈夫? 怪我は無いですか? 回復魔法かけますわっ」

「えへ、エリゼ、ありがとう。大丈夫よ、心配かけてごめんね」

 恥ずかしくなって、照れ笑いを浮かべる。

「ほら、手を」

 立ち上がろうとすると、騎士様が手を差し出してくれた。

「あ、すみません。ありがとうございます……」

「まったく君は面倒がかかるな」

 そう言った騎士様の彫刻のような顔が、僅かに緩んだような気がした。
< 17 / 150 >

この作品をシェア

pagetop