落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
 静かな夜。
 何度も寝返りを打ったが、結局眠れずにベッドから起き上がった。
 この部屋は住み込みで働いている使用人用の部屋で、ここに来た八年前から使っている。ギシギシと軋む年季の入ったベッドに、古びた家具、最低限の物しかないが、田舎の家より遥かに豪華だ。

 ガタガタッ。
 少し建付けの悪い窓を押し開けると、冷たい夜風が入り込んできた。空には少し欠けた月が輝いている。

 ふと窓際の机の上に目が止まった。月明かりに照らされているのは、ライオネル様から渡された魔伝言鳩だ。
 そっと鳩の形をした白い紙を一枚取り、今日の出来事を思い返す。

 ライオネル様って不思議な人よね……。
 氷の副団長様と呼ばれてるだけあって少し怖かったけど、クレープ奢ってくれて、平民の見習い聖女の護衛をしてくれるって言うし、こんな高価な魔道具をほいほい人にあげちゃうし。とても妹想いだし。

 月のような金色の瞳をし、夜風のようなひんやりとした空気を纏っていて、近寄り難そうな雰囲気なのに。

「本当、不思議な人……」

 これから護衛を頼むのは気は引けるけど、どこか楽しみな自分もいる。

 私はもう一度、夜空を見上げた。
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