落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
 私は手をかざし、力いっぱいアニーに向かって魔法を注いだ。白い光が小さな身体を照らす。

「お願いっ、目を開けてっ」

 目の前がぐらりと回っても、呼吸が苦しくなっても、懸命に力を放出した。

「もう、お止めなさいっ」

 後ろからそう言われて肩を掴まれた。

「もうこれ以上魔力を使えば、あなたの命が危ないわ」

 びっくりして振り返ると、聖女様が心配そうに見ている。

「で、でも、これで治ったんですっ。だからっ」

 聖女様は頭を左右に振った。

「回復魔法は亡くなった方を蘇らせることはできないの」

「でも、でもっ、うっ……ぐっ」

 嗚咽して喋れなくなった私を、聖女様が優しく抱きしめてくれた。


 貴重な聖属性の魔力を持っているとわかった私は、そのまま王都の神殿に引き取られることになる。
 神殿では見習い聖女として入れるのは十三歳からなのだが、孤児になった私は特別、神殿に置いてもらえることになった。その代わり、文字の読み書きや一般教養、聖女の歴史など、見習いになる前に勉強しなければならないことは多い。
 田舎の孤児の私が神殿に入るのを反対する者もいたが、当時の大聖女様が取り計らってくれたらしい。
 実は私を抱きしめてくれた聖女様は、大聖女様だったのだ。今は引退されてしまったけど、とても慈悲深く素晴しい大聖女様だった。

「失う哀しみを知っているあなたなら、きっと立派な聖女になれるでしょう。一緒に神殿に来ませんか?」

 そう誘ってくれた先代の大聖女様の優しい眼差し。

『聖女になる』

 それは何もかも失ってしまった私の、生きる希望になった。
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