落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
 突然、ライオネル様が静かに笑い声を上げたので、驚いてまじまじと見つめた。
 間違いではない。いつも表情を崩さないライオネル様が笑っている。それにしても美形の笑顔って破壊力が半端ないわ。

「君は、まるで……リスみたいだな。くくっ」

 リス……、ですか。確かにちょっと口に詰めすぎました。恥ずかしくて顔を隠すように俯く。

「あ、すまない。失言だったか。悪い意味ではないのだが……」

「いいえ、大丈夫ですっ。気にしてないです」

「あちらのベンチで落ち着いて食べたらどうだ?」

 そう言ったライオネル様の視線の先を辿ると、屋台から少し離れた場所にベンチがあった。

「はい、そうですね。そうします」  


 神殿前広場の中央にある噴水前のベンチに並んで座る。
 私ばかり一人で食べていたことに気が付いて、静かに隣で座っていたライオネル様に揚げ菓子の包みを差し出した。

「ライオネル様もいかがですか?」

「いや、俺はいい」

「揚げ菓子はお嫌いですか?」

「嫌いというか、菓子自体あまり食べる習慣がないんだ」

「そうなんですね。折角ですし、お一つどうですか?」

 包み紙をぐぐいと目の前に差し出すと、ライオネル様はかすかに眉をひそめる。
 う、強引過ぎたかな……と思っていると、

「そう……だな。一つもらおうか」

 革手袋を外すと、ひょいと揚げ菓子をつまんで口に放り込んだ。

「ん、……うまい」

「そうですよね! 良かったです」

 自分で作ったわけでもないのに嬉しくなった。
< 31 / 150 >

この作品をシェア

pagetop