落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
 ナタリーと別れ、泉水の入った水桶を運んで処置室に戻ってくると、一人の聖女に声を掛けられた。

「アイリス、泉水を汲んできたのね。丁度良かったわ。至急大聖女様のところに持っていってもらえるかしら? 必要らしいの」

「あ、はいっ。わかりました」

 泉水をガラスの水差しに注ぎ入れると、大聖女様の元へ急いだ。


 コンコン。
 大聖女様がいらっしゃる処置室のドアをノックする。

「アイリスです。泉水をお持ちしました」

「どうぞ、お入りなさい」

 室内から大聖女様の落ち着いた声が聞こえた。
 ここは大聖女様の専用の処置室で、患者も高位貴族や王族の方もいらっしゃるような特別な部屋だ。部屋の装飾もベッドもかなり豪華である。
 私が部屋に入ると、治療中だったのかベッドの横にいた大聖女様が振り返る。天蓋の中の人物はこちらからは見ることはできない。

「ご苦労さま。そこのテーブルに置いておいてください」

「はい」

 水差しを中央のテーブルに置くと、邪魔にならないようにすぐさま退出する。

「失礼しました」

 部屋のドアを閉める瞬間、隙間から大聖女様と会話する聞き覚えのある声が聞こえたような気がして手を止めた。

「聖水の準備が整いましたわ、フォーレン副団長殿」

 フォーレン副団長!? 

 大聖女様の言葉が気になったが、盗み聞きをするわけにはいかず静かに扉を閉めた。心臓が嫌な音をたてる。
 うそ、ライオネル様がいらっしゃるの!? どこか怪我を!? それとも体調不良!?
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