落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
 ぼんやりとした頭が一瞬で覚醒した。ライオネル様の治療をして、疲れて私まで寝てしまったらしい。

「具合いは大丈夫ですか!?」

「あぁ。もう何ともない」

「そうですか。よかったです」

 ほっと胸を撫で下ろす。ライオネル様は視線を外した。

「あ、その……、迷惑をかけたな。治療も……ありがとう」

 ライオネル様の顔が赤く見えるのは、夕日のせいだろうか?

「いえ、気にしないで下さい。あの、これから護衛のとき、回復魔法をかけさせてもらえませんか?」

「ん? なぜだ?」

 ライオネル様は怪訝そうな顔をする。
 護衛のお礼に回復魔法をかけてあげたいと思っていたが、首の傷跡を見てもっと気持ちが強くなった。でも正直に話しても、ライオネル様はきっと拒否するだろう。

「それは……、あ、練習してるんです! まだまだ魔法が上手く使えなくて、実践練習したいんです。ライオネル様には日々の疲労の回復具合とか、教えていただければ嬉しいなと……」

 嘘は言っていない。まだ訓練中の身としては、協力してくれれば嬉しいのは間違いない。その上、少しでもライオネル様の体調が回復してくれればいいなと思う。

「実践……。なるほど、そういうことか」

 ライオネル様は顎に手を当て考え込んでいる。

「そういう事情なら協力しよう」

「ありがとうございます! 頑張ります!」

 私はぎゅっと両手を握ってみせた。

「そろそろ日が暮れる。早く戻った方がいい」

 太陽は山の後ろに沈み、オレンジ色の背景に山のシルエットが黒く浮かび上がっている。空も段々と薄暗くなってきていた。

「あ、やばっ。ハンナさん、困ってるかも」

 買った食材はまだここにある。

「急ごう」

「はいっ」

 私たちは慌てて神殿に向かった。
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