落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
 買い物の途中から背中の傷跡が痛みだし、聖水を所持しなかったことを後悔する。
 どうにか我慢をしていたが、もうすぐ神殿という所で俺は意識を失いかけた。

「ライオネル様、大丈夫ですか!? 歩けますか? 回復魔法をかけますね!」

 朦朧とする意識の中、アイリスの心配する声が聞こえてくる。

 大丈夫だ。心配するな。いつものことなんだ。

 そう言いたいが、思うように声にならない。
 白い温かな光に包まれると、段々と呼吸が楽になり痛みも治まってくる。
 なんて心地良い光なんだろう。忘れていた、懐かしい優しい光だ。母とエリゼと過ごした穏やかな日々のような――。

 目を開けると、俺はアイリスの膝の上だった。

「! な……っ」

 慌てて飛び起きる。なんてことだ。あのまま寝てしまったのか。しかも、彼女の膝の上でなんて、どうかしている……。

 アイリスは木にもたれ掛かりながら、寝息を立てていた。魔力が少ないというのに俺の為に使ったから、疲れたのだろう。

 アイリスの護衛を引き受けてから、神殿で彼女のことが目に入るようになった。
 きっと今まで会ったこともあったかもしれないが、聖女の中の一人としてしか認識できていなかった。

 彼女は他の聖女達よりも小さく華奢な身体なのに、人一倍動き回っていた。
 患者の案内をしたと思ったら、洗濯物を抱きかかえ走り、治療が終わった患者を笑顔で見送る。
 お菓子を口いっぱいに頬張った姿も、ころころと変わる表情もなぜか見飽きない。

 辺りが夕日に照らされている。もう神殿に彼女を送り届けなければ遅くなってしまう。

 それなのに、その時俺は穏やかに眠る彼女の寝顔を、もう少しだけ眺めていたいと思った。
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