落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
 そう言って僅かに笑みを浮かべた母は、俺の胸の中に倒れ込んだ。

「母上……っ。母上――っ」

 必死で呼びかけるが、もう二度と母の綺麗な金色の瞳を見ることは叶わなかった。


 あの後知ったのだが、魔物は強大な魔力に吸い寄せられる習性を持つ。だとすると、俺が魔物を呼び寄せたも同然だ。

 あの時湖に行きたいなんて言わなかったら。
 魔物の性質をしっかり把握していれば。
 もっと魔力のコントロールができていれば……。
 そうすれば母が被害に遭うことはなかったのに。

 いくら後悔しても、もう遅い。
 父や兄達、まだ甘えたい盛りのエリゼから母を奪ったのは、この俺だ。
 だから俺は大事な人達を守る。この命をかけてでも。

 この国の魔術師は魔物と直接戦うことはない。俺は最前線で魔物を討伐する為に、騎士団に入団することに決めた。
 母の死のきっかけになった膨大な魔力は必要ないと、魔力抑制魔法で抑え込んでもらった。
 騎士団に入った時点でゴードン伯爵家との婚約は破棄されてしまう。でもそれで良かった。いつ命を失うか分からない者に婚約者など必要ないと思った。

 それから俺は魔物の傷による後遺症に耐えつつ、懸命に剣の訓練に励んだ。
 そして、いつからか『氷のようだ』と言われるようになってしまった。


 俺は聖水の入った小瓶を取り出し、昨日の出来事を思い出した。
 昨日、アイリスから護衛を頼まれて市場に行った。
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