落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
 名前を呼ばれてライオネル様を見上げると、彼の手が近づいてきた。
 え? 何!?
 身体を硬直させて身構えていると、

「髪に草が付いている。……ん、取れた」

 独り言みたいに囁く声が、耳に響く。
 ライオネル様が草を取ってくれて、優しく引っ張られた髪がサラサラと戻ってきた。

「あ、ありがとうございます……」

 全身に鼓動の音が響き渡る。まるで髪の毛の先から足の先まで心臓になってしまったかのようだ。

 私がしばらく固まっていたからか、ライオネル様が自身の行動に気づいたらしい。

「あっ、す、すまない。ついエリゼにするみたいにっ」

 ライオネル様が髪をクシャッと掻いた。少し慌てたような仕草だ。心なしか顔が赤い。
 もしかして照れてる? うわぁ、なんか可愛いぞ。
 私の鼓動が違う意味で高鳴ってきた。

「じゃ、じゃあ行きましょう」

「あぁ」

 こんなふうに二人で過ごす時間はとても心地良い。

 私はライオネル様の傷跡を見た時、ぎゅっと胸が締め付けられた。少しでも助けたいと思った。それは他の患者様と同じ気持ちではない。
 私はその意味に気づき始めていた。
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