落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
 私の身長の二倍はありそうな塀の向こう側は、ここからでは確認できない。塀の真横をしばらく歩いて鉄門扉の前に到着したが、門番の姿は見当たらなかった。

 私が辺りをキョロキョロと見回していると、ライオネル様は塀に埋め込まれたガラスの板に手をかざす。するとガラス板に男性の顔が映し出され、そこから声が聞こえた。

「どちら様ですか?」

「ライオネル・フォーレンだ」

「フォーレン様、ようこそいらっしゃいました。只今、門をお開けしますのでお待ちください」

 そう言うと男性の姿が消え、ただのガラス板に戻ってしまった。

「えっ、え? 今の何ですか!? 今、この中に人がいましたよね!?」

 私は狼狽えながらガラス板を指差した。

「いや、この中に人はいない。他の場所にいる人物が、ここに映し出されるようになっているんだ。これも魔道具だ」

「あー、魔道具なんですか……」

 私はガラス板をまじまじと見つめた。なんの変哲もないただのガラス板にしか見えない。

 ギィィィ……。
 急に門扉が開きはじめたので、私はびくっと身体を震わせる。誰もいないのに門扉が勝手に開いたからだ。

「ひえっ、何!? 勝手に開きましたよ!?」

「この門は自動で開閉するらしい」

「そ、そうなんですか……」

 ライオネル様はとても冷静だった。なんか一人で騒いでいて恥ずかしくなる。
 ここは魔術師団の研究所だ。色々と珍しい魔道具もあるだろう。
 もっと落ち着かないと……と、そう自分に言い聞かせてからライオネル様の顔をチラリと見ると、なぜか口元を手で押さえていた。

「……もしかして笑ってます……?」

「あ、いや、新鮮な反応だと思ってな」

「新鮮……」

「ほら、行くぞ」

「あ、はいっ」

 門の中に入るライオネル様の背中を追いかけた。
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