落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
 私は息を呑んだ。
 そんなこと言ってたんだ……。

 こちらを向いたライオネル様と視線がぶつかる。全てを見透かしてしまいそうなその瞳を受け止められず、私は顔を伏せた。

「そ、それは……」

 声が震える。
 どうにか誤魔化さないとと考えていたが、まだ夢の余韻が残っている私にはこれ以上平静を保つのは難しく、涙が溢れ出てきてしまった。
 私は慌てて涙を指で擦った。

「無理に擦ってはいけない。これを」

 ライオネル様が白いハンカチを差し出してくれた。

「すみませっ、ありがとう……ございます……」

「そこまで踏み込むつもりはなかったのだが……、悪かった」

「いえ、だいじょう……ぶ……です……。すみま……せ……」

 差し出してくれたハンカチを受け取り首を振った。目をぎゅっとつぶり息を止め、これ以上泣かないようにじっと耐える。

「……我慢しなくていい」

 ライオネル様の口調がとても優しかった。
 ずっと我慢していた思いが溢れ、涙は止まらない。私がしばらく泣いている間、ライオネル様は何も言わなかった。


 家族や村人達、多くの人が命を落とした中、どうして私は生き残ってしまったのか、そう自分に問いかけながら、ずっと心の奥に感じていたのは罪悪感だった。

 本当に私が生き残って良かったの? 私が生きていて意味があるの?

 もし聖女になって人々を救うことができたら、私は生きていてもいいと許されるのではと思った。

 少し落ち着いてきた私は、ぽつりぽつりと語り始める。
< 77 / 150 >

この作品をシェア

pagetop