落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
「あ、わわっ、ありがとうございます、大丈夫です!」

「顔色が良くないようだが……」

 顔を覗き込まれると騎士様の顔が近くに迫り、違う意味でめまいしそうになる。金色の瞳、涼しげな目元、スッと通った鼻筋、彫刻作品のようにどこか人間離れした美しさだ。

 あれ? 誰かに似てるような?

 そんな考えがよぎったが、分からないまま通り過ぎていった。
 小さな身体の私は、騎士様に後ろからすっぽりと抱きしめられた状態で、背中から温もりが伝わってきた。心臓が飛び跳ね、私は慌てて椅子に座り直した。

「だ、だ、大丈夫です。す、すみません。ちょっと集中しすぎたようで……」

「そうか……」

 一見、冷淡な雰囲気の騎士様だが、もしかして心配してくれた?

 たった今気づいたのだけど、この騎士様ってたしか氷の副団長様と呼ばれている方だ。名前は……、えっと……、ライオネル・フォーレン様? だったような。

 神殿に何回かいらしたことがあって、遠目で見かけたことがある。
 この端正な顔立ちに、公爵家のご子息で、若干二十一歳で王都騎士団副団長。独身で婚約者もいないということで独身の聖女達が騒いでいたので覚えている。
 もちろんシャーロット様もその中の一人だ。

 ん? この状況、まずいのでは?
 副団長様がいるのに言わなかったことをシャーロット様にバレたら、またなんて嫌味を言われるか。そう思うとぞくっと寒気がした。
 まだ身体はだるいが、ここにいるわけにはいかない。

「あの、これで治療は終わりですので、もしまた何かありましたらお越しください!」 

 私は二人にお辞儀をして、処置室を逃げるように後にした。
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