憧れの専務は私の恋人⁉︎
「お待たせしましたね。」

 現れたのは、絢爛豪華な振袖に身を包んだ早川麗華だった。まるで将軍のような貫禄と威圧感に、俺は自然と頭を下げた。

「早川麗華です。息子さんとお会いするのは初めてですね。」
「東雲智也と申します。お招きいただき、ありがとうございます。」

 麗華が着ているのは、おそらく自身がデザインした着物。どこかで話題を振らなければと頭を回転させた。

「早速ですが、智也さんにお聞きしたいことがございます。よろしいですか?」
「もちろんです。なんでもお聞きください。」

(どこから来る……なんの話題から……)

 鋭い眼光を受けて怯みそうになったが、俺は気持ちを落ち着けて麗華の質問を待った。

「ではまずは、好きな食べ物を教えてください。」
「えっ?」

 仕事の話だろうと思っていたため、拍子抜けした。

「好きな食べ物って、相性を計るには大事なことだと思うんです。」

(まさか本当に見合いをするつもりなのか!?)

「何でもいいですよ?食材でもお料理でも……ないのですか?」
「いえ、そういうわけでは……」

 好きな食べ物は、詩織と一緒に食べるパフェ一択だ。しかし、そのまま答えていいのだろうか。見合いだとしたら、女の影を見せるのは不正解だ。

「い、今は……パフェが好きで……」
「ぇ。」

 他に好きな食べ物が浮かばず、思い切って答えたら背後から困惑した父の声が聞こえた。

「まぁ!パフェがお好きなんて、見かけによらないんですね!」
「よく言われます。あはは、あははは。」

(これで合ってるのか!?)

 楽しそうに笑っている麗華の顔に、詩織の笑顔が重なった。こんな会話は詩織としたい。早く帰って詩織に会いたい!しばらく気楽な趣味趣向に関する質問が続き、俺は困惑しながらも麗華の質問に答えていった。
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