憧れの専務は私の恋人⁉︎

11.姉の呼び出し

「詩織!?どうしてここにいるの!?」

 そっと顔を覗かせると、専務は驚いて立ち上がった。後ろに座っている社長も口を開けたまま固まっている。驚くのも無理はない。私もお見合い相手が専務だと聞かされたのは、つい先ほどのことだった。

 数日前の夜、突然姉から電話がかかってきた。

「詩織?今週の土曜日、お見合いするから帰って来て。」
「お見合い!?私が!?」
「土曜の朝に車を寄越すわ。」

「お姉様、あの……」

 恋人がいるからお見合いを受けることはできない──そう言いたかったけど言葉に詰まった。家のことは兄と姉に任せきり。兄弟の中で私だけが自分の好きなように生きている。

「……わかりました。土曜日ですね。」

 お見合いを断ることはできなかった。

「デートだったのにな……」

 最近は専務とゆっくり会って話す時間もなかったから、すごく楽しみにしていた。でも断らなければならない。

「なんて言えばいいんだろ……」

 『お見合いがあるから』なんて言えない。言い訳を考えていると、専務から電話がかかってきた。幸か不幸か仕事になったという。お見合いがあると言わなくて済んだけれど、隠し事をしているような気がして後味が悪かった。
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