戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
その時だった。

市場の喧騒を切り裂くように、蹄の音が響く。

「……馬だ?」

振り返る人々の間を、鎧を身にまとった騎兵たちが進んでくる。

陽光を反射する金属の輝きと、重々しい空気が市場を一瞬で静まり返らせた。

その列の先頭にいる男と、視線がぶつかる。

漆黒の髪に、澄み渡る蒼い瞳――

その瞳には、群衆とは違う鋭さと威厳が宿っていた。

一目でわかった。

この人は、ただ者ではない。

きっと――高貴な人だ。

「何をしている?」

低く通る声が市場に響いた。

「奴隷の売買でございます」

商人の隣にいた家来らしき男が、恭しく答える。

「……あの女も奴隷なのか」

その問いに、「おそらく」と短く返される。

私は思わず視線を落とした。

けれど、一番前に立つ男の視線は鋭く、まるで心の奥まで見透かされるようだった。

刺すようなその眼差しに、膝が震える。
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